RFC 9989でDMARCはどう変わった? — pct廃止・Tree Walkなど変更点と実務への影響
最終更新: 2026-08-07
RFC 9989とは、2026年5月に公開されたDMARCの新しい標準仕様です。 2015年から使われてきた従来仕様(RFC 7489)と、PSD向け拡張(RFC 9091)を置き換えました。あわせて、集約レポートの仕様はRFC 9990、失敗レポートの仕様はRFC 9991として別文書に分離されています。
先に結論です。ほとんどの企業は、既存のDMARCレコードを変更する必要はありません。 ただしpct=タグを使っている場合と、古い解説記事を参考にする場合には注意が必要です。
変更点の一覧
| 項目 | 従来(RFC 7489) | 新仕様(RFC 9989) |
|---|---|---|
pct=(適用割合) | あり(例: pct=10で10%に適用) | 廃止 |
t=(テストモード) | なし | 新設。t=yでポリシーを試験扱いに |
np=(存在しないサブドメイン向けポリシー) | なし(RFC 9091側) | 正式に統合 |
psd= | なし(RFC 9091側) | 統合(Public Suffix Domain向け) |
| 組織ドメインの判定 | Public Suffix List(外部リスト)を参照 | DNS Tree Walk(DNSを上位へたどって判定) |
| レポート仕様 | 本文に同梱 | 別文書化(集約=RFC 9990、失敗=RFC 9991) |
重要な変更を3つだけ深掘り
1. pct=の廃止 — 「10%だけ適用」はできなくなる
従来はpct=25のように、ポリシーを一部のメールにだけ適用しながら段階移行する方法がありました。新仕様ではこの割合指定が廃止され、試験的な扱いを示す用途はt=yに整理されました。
実務への影響:pct=が書かれた既存レコードが即座に壊れるわけではありませんが、新仕様に対応した受信側では無視されていきます。「pct=10のつもりが全量に適用されていた」という事故を避けるため、pct=を使っている場合はレコードを見直してください。段階移行はこれからは「none → quarantine → reject をレポードで確認しながら進める」が唯一の王道になります(→安全な引き上げ手順)。
2. DNS Tree Walk — 組織ドメインの決め方が変わった
DMARCでは「mail.example.co.jpの組織ドメインはexample.co.jp」のような判定が随所で使われます(アライメントのrelaxed判定、サブドメインへのポリシー継承など)。従来この判定は外部の一覧表(Public Suffix List)頼みでしたが、新仕様ではDNSを上位へたどって探索するDNS Tree Walkに変わりました。
実務への影響:一般的なドメイン構成なら結果は変わりません。深い階層のサブドメインを多用している組織では、新旧の受信側で判定が異なるケースがあり得るため、主要サブドメインに明示的にDMARCレコードを置くとより確実です。
3. レポート仕様の分離
集約レポート(rua)はRFC 9990、失敗レポート(ruf)はRFC 9991に分かれました。日々の運用は変わりませんが、DMARC解析サービスを選ぶ際は新RFCへの対応を確認しておくと安心です(→レポートの読み方と解析サービスの選び方)。
自社は何をすべきか — 3分チェック
- 自社のDMARCレコードに
pct=が含まれていない → 何もしなくてOK pct=100が含まれている → 実質的な意味は同じですが、この機会に削除を推奨pct=100未満が含まれている → 段階移行の設計を見直し、pct=を外した上でレポート確認による移行へ切り替える(→DMARC設定のやり方)
現在のレコードは無料診断で30秒で確認できます。
よくある質問
Q. 既存のv=DMARC1; p=none; rua=...というレコードは書き換えが必要ですか?
A. 不要です。一般的な構成のレコードは新仕様でもそのまま有効です。
Q. 古い解説記事(RFC 7489ベース)はもう参考にできませんか?
A. 大枠は今も有効ですが、pct=の使い方や組織ドメイン判定の説明は現行仕様と異なります。2025年以前の記事は、その2点を差し引いて読んでください。一次情報は公式ソース集から辿れます。
Q. t=yと旧pct=0は同じですか?
A. 「ポリシーを宣言しつつ、強制はしない試験状態」という狙いは近いものです。ただし新仕様における正式な表現はt=yであり、今後はこちらに統一されていきます。
Q. GmailやOutlookの送信者要件は変わりましたか?
A. RFCの改訂と各社の送信者要件は別物です。要件の最新状況は5社の送信者要件まとめで確認してください。