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VMC・CMCとは — BIMIの証明書と、その費用対効果

最終更新: 2026-10-06

BIMIを設定すると、受信画面の送信者アイコンに自社ロゴを表示できます。ただしGmailで表示させるには、認証局が発行する有償の証明書が必要です。それがVMCです。

このページでは、買うべきかどうかを判断できる材料をお出しします。結論を先に言うと、多くの中小企業にとっては、まだ早いというのが率直な見解です。

先に結論 — 取るべき会社の条件

VMCは、次のいずれかに当てはまる会社に向いています。逆に、どれにも当てはまらないならいま取る必要はありません(理由は下の「費用対効果の、正直な話」に書いています)。

  • なりすましの実害が出ている — 顧客から「御社を名乗るメールが来た」と連絡がある場合、ロゴは識別手段として意味を持ちます
  • 金融・EC・行政など、信頼が売上に直結する — 開封率やブランド認知への投資として説明できます
  • すでに3大必須設定とDMARC強化を終えている — 次の一手として自然です
  • 商標を登録済み — 追加コストが証明書だけで済みます
📌 どれにも当てはまらない場合、先にやるべきことがあります。SPF・DKIM・DMARCの3点と、DMARCを p=quarantine 以上へ育てることです。どちらも費用はかかりません。証明書にお金をかけるのは、そのあとです。

VMCとCMCの違い

VMC
Verified Mark Certificate
CMC
Common Mark Certificate
前提登録商標のロゴであること商標登録は不要。1年以上そのロゴを使ってきた実績(または政府発行の紋章)が根拠。期間の条件は認証局が定めます
費用年額の有償。目安はDigiCertで月146ドル/年1,752ドル(1証明書・確認日 2026-09-05)同上。認証局・プランで変わります
Gmailでのロゴ表示対応対応状況は受信事業者により異なります
青いチェックマークVMCが必要とされています—

どちらも「このロゴは本当にこの会社のものである」ことを認証局が保証する証明書です。誰でも他社のロゴを出せてしまっては、BIMIがなりすましの道具になるため、この仕組みがあります。

📌 費用は認証局や契約条件によって幅があります。実際の見積もりは認証局へ直接お問い合わせください。

取得の前提条件

証明書を買う前に、これらが揃っていないと申請できません。

  1. DMARCが p=quarantine 以上 — p=none では対象外です。しかもサブドメイン向けポリシー(sp=)が弱いままだと弾かれることがあります
  2. ロゴがSVG Tiny PS形式 — Illustratorの通常のSVG書き出しでは通りません。専用のプロファイル指定が必要です
  3. 商標登録(VMCの場合) — 出願中では足りず、登録済みであることが求められます。日本の特許庁の登録も対象です
  4. 送信ドメインの実績 — 新しいドメインは、実績が貯まるまで表示されにくいという運用上の壁があります

1が最大の関門です。p=quarantine への引き上げは、正規のメールがすべて認証を通っていることを確認してからでないと危険です(→DMARCレポートとは何か)。

効果のデータ — 何が測られていて、何が測られていないか

📌 日本ではBIMIの普及がこれからの段階で、国内の数値事例は公開されていません。以下は参考として、欧米で公開されているデータです。日本での事情はこの下の節にまとめています。

ロゴを出すと開封が増える、というデータはあります。ただし数字の出どころと測り方に幅があるので、そのまま鵜呑みにはできません。分けて見てください。

出どころ数字何を測ったか
BIMI Group
標準化団体・2020年2月
開封率 平均+10%Verizon MediaがYahoo Mailのベータで実施した、ロゴ表示のテスト結果として報告されたもの
Red Sift + Entrust
2026年8月
開封シェア 米+21% / 英+39%
購買シェア 米+34% / 英+32%
ブランド想起 最大+44%
1,026名へのアンケート実験(英626・米400)。同じテストメールを、ロゴ有り・無しで見せて反応を比べたもの。実際の受信箱の計測ではありません
実際に導入したブランドの声
Red Sift 掲載
開封率 +4〜6%(TalkTalk)
クリック率 +80%(Tallyfy)
運用しているブランド自身のコメント。実運用でまとまった数字はこれくらいしか公開されていません
⚠️ 数字を読むときの注意が2つあります。
  • 「+39%」は開封率が39%上がるという意味ではありません。ロゴを出した側が、出していない競合から奪った開封シェアです。競合が全員ロゴを出していれば、この差は生まれません
  • いずれもBIMI・VMCを販売している側が出した数字です。第三者の検証ではありません。実運用のTalkTalkの4〜6%と、アンケート実験の21〜39%は桁が違います

日本での事情

国内でBIMIの効果を数字で公開している事例は見当たりません。国内のメール配信各社・セキュリティ各社の解説を当たっても、自社や顧客で測った数字を出しているところはありません。国内最大手級のTwoFiveも、自社の記事でカナダのPALISADE経由で上のRed Sift/Entrustの39%を引用しています。日本語で見かける数字は、たどると同じ1本に行き着きます。

受信側の対応状況 — Yahoo!メールがまだ「検討中」です

ここが日本でいちばん効く事情です。ロゴが出るかどうかは、受け取る側のメールサービスが対応しているかで決まります。標準化団体のBIMI Groupが対応状況を公開しています(2025年5月時点)。

状態日本で使われているサービスそのほか
対応済みGmail/Apple(iCloudメール)/NTTドコモ/KDDI(au)Fastmail、Zoho Mail、La Poste、GMX、Web.de、Comcast など
検討中Yahoo! JAPAN/クオリティアBT、mail.com、Seznam
対応しない—Microsoft(Outlook.com / Hotmail)

ドコモとauが対応済みなのは、日本にとって大きい点です。海外の記事では「BIMIはGmailとApple」と書かれることが多いのですが、日本ではキャリアメール宛てにも出ます。個人のお客様が多い配信なら、キャリアメールの比率がそのまま効く面積になります。

⚠️ いっぽう、Yahoo!メール(Yahoo! JAPAN)はまだ「検討中」です。日本の個人向け配信では無視できない規模なので、いまの時点では、そのぶん効く面積が狭くなります。逆に言えば、ここが動けば面積は一段広がります。Microsoft(Outlook.com)は「対応しない」に分類されています。法人宛ての配信が中心なら、この点は割り引いて考えてください。

※ 上の分類はBIMI Group(AuthIndicators Working Group)の公開情報です。各社の方針は変わります。ソフトバンクは一覧に掲載がありません。

日本の商標でVMCは取れます

VMCは登録商標であることが前提ですが、日本の特許庁(JPO)の商標登録は対象に含まれています。米国・EU・英国・ドイツ・オーストラリア・カナダなどと並んで、当初から認められている商標官庁のひとつです。日本の会社が日本の商標でVMCを取ることに、制度上の障害はありません。

商標が未登録の場合は、出願からの期間と費用を別途見込む必要があります。その場合、登録商標を必要としないCMC(Common Mark Certificate)という選択肢もありますが、CMCではGmailの青いチェックマークは付きません(→ VMCとCMCの違い)。

実際に出している国内ブランド

数字が公開されていなくても、どの会社が投資しているかは外から確かめられます。主要な国内ブランドのドメインを実際に引いた結果です(確認日 2026-09-05)。

業種ドメイン証明書(a=)
EC・小売rakuten.co.jpあり(自社ホスト)
EC・小売amazon.co.jpあり(自社ホスト)
EC・小売uniqlo.comあり(DigiCert)
EC・小売nissen.co.jpあり(DigiCert)
金融smbc.co.jpあり(自社ホスト)
金融mufg.jpあり(DigiCert)
金融mizuhobank.co.jpあり(DigiCert)
金融sbisec.co.jpあり(DigiCert)

※ 主要な国内ブランドを機械的に引いた結果で、網羅的な調査ではありません。ご自分のドメインや、気になるブランドのドメインは無料診断で確かめられます。

金融とECに集中しています。なりすましの被害が直接お金につながる業種と、メール経由の売上が大きい業種です。数字は公開されていませんが、どういう会社が投資しているかは、こうして分かります。

国内全体では、約120社・約330ドメインがBIMIに対応していると報告されています(出典:なりすまし対策ポータル ナリタイ/運営は株式会社TwoFive・2025年6月時点)。まだこれからの段階です。

投資判断

数字に幅はありますが、向きはどの調査も同じです

数字に幅はありますが、向きはどの調査も同じです。TalkTalkのコメントが、実務の感覚をいちばんよく表しています。

Email marketing teams will spend so much money getting a 2-3% email open rate increase. So for TalkTalk, 4-6% is very positive.
(開封率を2〜3%上げるために、メールマーケティングのチームは多額を投じている。だからTalkTalkにとって4〜6%は非常に良い数字だ)

メール経由の売上が大きく、開封率の数%を本気で取りにいっている会社なら、年20〜30万円は回収の見込みが立つ金額です。逆に、メールの配信量が少ない・売上への寄与が小さい会社では、同じ費用を他に回したほうが効きます。

ただし、順番は変わりません

BIMIは到達率を上げる仕組みではありません。ロゴが出ても、迷惑メール判定が緩くなるわけでも、届く量が増えるわけでもありません。届いたメールが開かれやすくなるという話です。

優先度やること費用効果
1SPF・DKIM・DMARCの3点セット0円届かない状態を解消する。効果は絶大
2DMARCを p=quarantine 以上へ育てる0円(手間のみ)なりすましを実際に止める。BIMIの前提条件でもあります
3迷惑メール率の改善・リスト整理0円(手間のみ)到達率に直結する
4BIMI(証明書なし)0円一部の受信事業者でロゴ表示
5VMC/CMCの取得年額有償Gmailでのロゴ表示と認証マーク

1〜3は費用がかからず、しかも効果が大きいのがポイントです。とくに2はBIMIを出すための前提条件なので、飛ばすことができません。ここを終えていない段階で証明書を買っても、ロゴは出ません。

まず現状を確認する

無料診断で、DMARCのポリシーとBIMIの設定状況が分かります。p=none のままなら、証明書の検討はまだ先です。まずDMARCの育て方から進めてください。

BIMIそのものの設定手順はBIMIとはに、全体の順番ははじめてガイドにあります。

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