DKIMセレクタの調べ方 — 「見つからない」と言われたときに
最終更新: 2026-10-06
DKIMには、SPFやDMARCと決定的に違う点があります。外部から「設定されているかどうか」を確実に調べられないのです。
SPFは yourdomain.com のTXTを見れば分かります。DMARCは _dmarc.yourdomain.com を見れば分かります。ところがDKIMは 【セレクタ名】._domainkey.yourdomain.com という場所にあり、この「セレクタ名」を知らないと、どこを見ればいいのか分からないのです。
診断で「確認できず」と出る理由
本サイトのスピード判定は、よく使われるセレクタ名を順に試しているだけです。google、selector1、omdk… といった代表的な名前を叩いて、見つかれば「設定済み」と表示します。
つまり「確認できず」は「未設定」という意味ではありません。独自のセレクタ名を使っていれば、正しく設定されていても見つからないのです。当サイトが「未設定」と断定しないのは、このためです。
確実な調べ方 — 届いたメールのヘッダーを見る
これがいちばん確実です。実際に送られたメールには、使われたセレクタ名が必ず書かれています。
手順(Gmailの場合)
- 自分のドメインから送ったメールを、Gmailで受け取る(自分宛てに1通送ればOK)
- そのメールを開き、右上の「⋮」→「メッセージのソースを表示」
- 表示された文字列の中から
DKIM-Signatureの行を探す - その行の中の
s=の後ろがセレクタ名です
DKIM-Signature: v=1; a=rsa-sha256; c=relaxed/relaxed;
d=yourdomain.com; s=omdk; t=1234567890;
^^^^^^ ← これがセレクタ名
あわせて d= も確認してください。ここが自分のドメインになっていることが重要です。配信サービスのドメインになっている場合、署名は本物でもDMARCの合格にはつながりません。
もっと簡単な方法
ヘッダーを読むのが面倒なら、そのまま丸ごとコピーして貼り付けてください。完全判定を選んで貼り付ければ、セレクタ名も d= も自動で読み取って判定します。
使っているサービスが多いなら — DMARCレポートから拾う
DMARCを設定していれば、毎日届く集計レポートに、どの送信元がどのセレクタで署名したかが記録されています。MAツール・通知システム・自社サーバーが入り混じっていて「そもそも何経路あるのか分からない」という場合は、ヘッダーを1通ずつ見るより、こちらのほうが早く全体像がつかめます。
名前が分かったら — DNSを引いて裏を取る
セレクタ名が分かったら、実際に公開鍵が返ってくるかを確かめます。v=DKIM1 や p= で始まる長い文字列が返れば、設定は生きています。
# macOS / Linux
dig TXT 【セレクタ名】._domainkey.yourdomain.com +short
# Windows
nslookup -type=TXT 【セレクタ名】._domainkey.yourdomain.com
📌 何も返らないときは、セレクタ名が違うか、DNSにまだ行き渡っていないか、そもそも登録されていないかのいずれかです。当サイトの無料診断にドメインを入れれば、同じことを画面上で確認できます。
主要サービスの既定セレクタ
よく使われているサービスのセレクタ名です。ここに載せたものは、すべて実際のDNSを引いて存在を確かめています(確かめ方は表の下)。
| カテゴリ | サービス | セレクタ名 | 設定方法 |
|---|---|---|---|
| グループウェア | Google Workspace | google | TXT 1本(管理コンソールで鍵を生成) |
| グループウェア | Microsoft 365 | selector1 / selector2 | CNAME 2本 |
| グループウェア | Zoho Mail | 利用者が決める 公式マニュアルの例は zoho | TXT 1本 |
| 配信 | オレンジメール | omdk | CNAME 1本 |
| 配信 | Amazon SES | ランダムな英数字 3本 | CNAME 3本(Easy DKIM) |
| 配信 | SendGrid | s1 / s2 | CNAME 2本 |
| 配信 | Mailgun | k1 | TXT 1本 |
| MA・CRM | Mailchimp | k1 | CNAME 1本 |
| MA・CRM | HubSpot | hs1 / hs2 | CNAME 2本 |
| MA・CRM | Zendesk | zendesk1 / zendesk2 | 2本 |
| MA・CRM | Marketo(Adobe) | m1 | TXT 1本 |
| MA・CRM | Salesforce | 利用者が決める 決まった既定値はありません | TXT / CNAME |
| レンタルサーバー | エックスサーバー | default | TXT 1本 |
| レンタルサーバー | さくらのレンタルサーバ | 管理画面に表示される値 公式マニュアルの例は rs20240118 のような日付形式 | TXT 1本 |
| レンタルサーバー | ロリポップ! | 利用者側では設定しません。ロリポップDNSを使っていれば、必要なレコードが自動で入ります(→ ロリポップの設定ガイド) | |
この一覧をどう確かめたか(確認できなかったものも書いています)
各社の「既定はこれ」という説明を、そのまま写してはいません。実際にそのセレクタでDNSを引き、公開鍵が返ってくることを1件ずつ確かめました。存在しない名前でも引いて、何も返らないこと(=引けていること)も確認しています。
google._domainkey.orange-cloud7.net → TXT v=DKIM1; k=rsa; p=…
selector1._domainkey.microsoft.com → CNAME selector1-microsoft-com._domainkey.microsoft.onmicrosoft.com
omdk._domainkey.orange-mail.org → TXT v=DKIM1; k=rsa; p=…
s1._domainkey.sendgrid.net → CNAME s1.domainkey.u…….sendgrid.net
k1._domainkey.mailgun.com → TXT k=rsa; p=…
k1._domainkey.mailchimp.com → CNAME dkim.mcsv.net
hs1._domainkey.hubspot.com → CNAME hubspot-com.hs01a.dkim.hubspotemail.net
zendesk1._domainkey.zendesk.com → TXT v=DKIM1; t=s; n=core; k=rsa; p=…
m1._domainkey.marketo.com → TXT k=rsa; p=…
default._domainkey.xserver.ne.jp → TXT v=DKIM1; k=rsa; p=…
Zoho Mail と さくらのレンタルサーバ を「利用者が決める」としたのは、公式マニュアルにそう書かれているためです。Zohoは「Provide the selector name…Ex: zoho」、さくらは管理画面に表示された値を使う形で、マニュアルの例が rs20240118 という日付形式でした。どちらも例であって、決まった既定値ではありません。
確認できなかったもの:
- Apple iCloud+ のカスタムドメイン(
sig1という説があります) — Appleの日本語マニュアルにセレクタ名の記載が見つからず、sig1._domainkeyをicloud.com/me.com/mac.com/apple.comで引いても何も返りませんでした。裏が取れないので載せていません - cybozu.com(
cybozuという説があります) — 公式FAQに「SPF / DKIM / DMARC を設定する機能は、未搭載です」と書かれており、cybozu._domainkey.cybozu.comも返りませんでした。なおcybozu.com自身の業務メールは Microsoft 365(selector1)で署名されています - Mailgun の
pic/mailo(複数のセレクタがあるという説があります) — 引いても返らず、確認できたのはk1だけでした - Zendesk・Marketo の設定方法 — 各社のドメインで確かめたときはTXTでした。契約や設定時期によってCNAMEになることがあるため、本数だけを書いています
確認日: 2026-09-05。セレクタ名も設定方法も、各社の都合で変わります。実際に使われている名前は、次の「届いたメールのヘッダー」で調べるのが確実です。
💡 セレクタ名はサービス側が決めるもので、利用者が自由に変えられるとは限りません。分からないときは、お使いのサービスの管理画面で「DKIM」「送信ドメイン認証」といった項目を開けば、設定すべき値と一緒に表示されています。
なぜ selector1 と selector2 のように2本あるのか
表を見ると、1本のサービスと、2本・3本のサービスがあります。この違いは鍵の入れ替え(ローテーション)をどうやるかから来ています。
| 本数 | 鍵を入れ替えるとき |
|---|---|
| 1本 | 古い鍵を新しい鍵に書き換える。書き換えてからDNSに行き渡るまでの間、署名の確認に失敗することがあります |
| 2本・3本 | いま署名に使っている鍵はそのままに、もう一方で新しい鍵を先に用意し、行き渡ってから署名側を切り替えます。止まる時間がありません |
Microsoft 365 や Amazon SES が2〜3本を要求するのは、このためです。CNAMEで各社の鍵サーバーを指す形になっているのも同じ理由で、鍵そのものはサービス側が持ちます。だから鍵が更新されても、お客様がDNSを触り直す必要がありません。
📌 CNAME方式のとき、ドメイン本体を引いても公開鍵は出てきません。委譲先をたどった結果として鍵が返るのが正常です。
複数のサービスを使っている場合
DKIMは、SPFと違って1本にまとめる必要がありません。サービスごとに違うセレクタ名を使うので、それぞれ追加すれば共存できます。
google._domainkey.yourdomain.com ← Google Workspace用
omdk._domainkey.yourdomain.com ← オレンジメール用
s1._domainkey.yourdomain.com ← 別サービス用
この3つは互いに干渉しません。「SPFは1本、DKIMは何本でも」と覚えてください。
自分でセレクタ名を決めるとき
Salesforceや自社のメールサーバーのように、セレクタ名を自分で決めるものがあります。あとから困らない付け方は次の3つです。
- どの経路の鍵かが分かる名前にする —
mkt(マーケティング)、sys(システム通知)、sf(Salesforce)など。何年か経つと、何のために置いた鍵なのか分からなくなります - 入れ替えを前提にする —
s1/s2のような連番や、202401のような日付を付けておくと、鍵を更新するときに古い鍵を残したまま新しい鍵を用意できます(上の「なぜ2本あるのか」と同じ考え方) - 英数字だけにする — セレクタ名に
.(ドット)を含めると、扱えないDNSの管理画面や配信サービスがあります
📌 使わなくなったサービスのセレクタは、切り替えから2〜4週間ほど置いてから消してください。遅延した再送や、忘れていた予約配信が残っていることがあります(→ 配信サービスの乗り換え)。