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DMARCレポート(rua)とは何か? — 毎日届くXMLの正体

最終更新: 2026-10-06

DMARCを設定すると、翌日あたりからXMLファイルが添付されたメールが毎日届くようになります。差出人はGoogle、Microsoft、Yahoo!など。英語で、中身は記号の羅列です。

届いたまま放置している方が多くいます。放置すると、DMARCを設定した意味の大半が失われます。

そもそもDMARCレポートとは何なのか?

DMARCレコードの中の rua= は、受信側への依頼です。

私のドメイン名を名乗るメールを受け取ったら、その結果をこのアドレスに教えてください。

受信事業者がこの依頼に応え、1日分をまとめて報告してくれているのが、あの添付ファイルです。

rua という名前は、次の3語の頭文字です。

Reporting  URI(s) for DMARC  aggregate  feedback reports
  報告の            送り先(URI)        集計した

訳すと「集計レポートの送り先」。日本語では単に集計レポートとも呼ばれます。

疑問答え
誰が送ってくるのかメールを受け取った側の事業者です。Gmail(Google)、Outlook.com(Microsoft)、Yahoo!メールなど。あなたが契約していなくても送ってきます
いつ届くのかおおむね1日1回、事業者ごとに1通ずつ。設定した翌日から届き始めます
費用かかりません。DNSの _dmarc.あなたのドメイン に置いたTXTレコード(DMARCレコード)の中に、rua= を書き足すだけです

必ず送ってもらえるのですか?

いいえ。義務ではありません。DMARCの仕様(RFC 9989)は、受信側についてこう書いています。

a mail-receiving organization supporting DMARC is under no obligation to send requested reports; although, it is recommended that they do send aggregate reports.
(DMARCに対応しているメール受信組織は、要求されたレポートを送る義務を負わない。ただし集計レポートについては送ることが推奨される)

つまり受信側の善意で成り立っている仕組みです。ただし実務では、これで困ることはほとんどありません。

  • Gmail・Outlook.com・Yahoo!メールといった主要どころは送ってきます。宛先の大半はここに含まれるので、全体像はつかめます
  • 小規模な受信サーバーからは、まず届きません。そもそも実装していないことが多いためです
  • そのドメイン宛てにメールが届いていない事業者からは、当然届きません。レポートは「受け取った事実」の報告なので、送っていない相手からは何も来ません
⚠️ 1通も届かないときは、まず設定を疑ってください。多いのは mailto: の書き忘れと、次の「自分のGmail宛てにしていた」ケースです。

自分のGmailやYahoo!メール宛てに送ってもらえますか?

できません。専用のアドレスを用意するのが面倒で、つい rua=mailto:自分の名前@gmail.com と書きたくなりますが、この書き方ではレポートは届きません。

自分のドメイン以外のアドレスを宛先にする場合、DMARCの仕様では受け取る側のドメインが「このドメインのレポートを受け取ってよい」という承認レコードを出していることが条件になります。次の形のTXTレコードです。

yourdomain.com._report._dmarc.gmail.com   TXT  "v=DMARC1"
└ あなたのドメイン ┘              └ 宛先のドメイン ┘

これを出すのは、宛先のドメイン側(この例ではGoogle)です。あなたには出せません。そして実際に引いてみると、主要なフリーメールはどこも出していません。

宛先にしたいドメイン承認レコード
gmail.com / googlemail.comありません
yahoo.co.jpありません
outlook.com / hotmail.comありません
icloud.comありません

※ 実際にDNSを引いて確認しました(2026-09-05)。

つまり、宛先は自分のドメインのアドレスにしてください。解析サービスを使う場合は事情が違い、サービス側が自社ドメインに承認レコードを用意しているので、案内されたアドレスをそのまま書けば届きます。

📌 DMARCレポートは、あなたの送信サーバーが出しているものではありません。「送った側の記録」ではなく「受け取った側から見た事実」なので、自社のログでは絶対に分からないことが書かれています。

何のために見るのか — 見るのはこの2点だけ

レポートには多くの数字が並びますが、見る目的は2つしかありません。この2つのために設定する、と考えてください。

① ポリシーを上げてよいか、判断する

「ポリシーを上げる」とは、なりすましを実際に止めにいくことです。DMARCのポリシー(p=)は、あなたのドメインを名乗る不正なメールを受信側にどう扱ってほしいかの指示で、3段階あります。

ポリシー受信側がすること
p=noneそのまま配送してよい。なりすましは1通も止まりません
p=quarantine迷惑メールフォルダへ入れる
p=reject受け取らない。なりすましが届かなくなります

止めるには quarantine → reject へ上げる必要があります。ところが、上げると認証に失敗している自社のメールも一緒に止まります。そこで確かめるのが、自社の正規の送信元がすべて認証に合格しているか——これがレポートを見る1つ目の理由です。

業務メール、メルマガ、問い合わせフォームの自動返信、請求システム、予約システム。ひとつでも失敗している状態で p=reject に上げると、そのメールが止まります。「上げても大丈夫」と言い切れる根拠は、ここにしかありません。

心当たりのある送信元がすべて pass になっていれば、引き上げてよい状態です。1つでも失敗しているなら、まずそれを直します。

② なりすましを見つける

見覚えのない送信元から、自社ドメインを名乗るメールが出ていないかを確かめます。なりすましはあなたのサーバーを経由しないので、自社の送信ログには1行も残りません。レポート以外に気づく手段がありません。

ただし、見覚えがない=なりすまし、ではありません。実際には自社に関係のある送信元であることのほうが多く、切り分けが要ります(→ 見覚えのない送信元だったときの切り分け)。

この2点以外は、慣れるまで見なくて構いません。

言い換えると、「自社ドメインを名乗るメールの全体像」が毎日タダで手に入っているということです。これは p=none(何もしない設定)の段階でも得られる、DMARCのいちばん実用的な価値です。

⚠️ p=none のまま、レポートも見ていない状態には、ほとんど意味がありません。なりすましは止まっておらず、止めるための判断材料も集めていない、という状態だからです。「DMARCは設定済み」と報告されている会社の多くが、ここで止まっています。

何が書いてあるのか — 実物を見てみます

添付されたZIPを開くと、こういうXMLが出てきます(値は架空のものです)。

<feedback>
  <report_metadata>
    <org_name>google.com</org_name>              ← 報告してきた事業者
    <date_range><begin>…</begin><end>…</end></date_range>  ← 集計した期間(1日分)
  </report_metadata>
  <policy_published>
    <domain>yourdomain.com</domain>              ← あなたのドメイン
    <p>none</p>                                  ← そのとき公開されていたポリシー
  </policy_published>
  <record>
    <row>
      <source_ip>203.0.113.10</source_ip>        ← どこから送られたか
      <count>128</count>                         ← 何通か
      <policy_evaluated>
        <disposition>none</disposition>          ← 受信側が実際にどう扱ったか
        <dkim>pass</dkim>                        ← DMARCから見たDKIMの結果
        <spf>pass</spf>                          ← DMARCから見たSPFの結果
      </policy_evaluated>
    </row>
  </record>
</feedback>

<record> の1つが「ある送信元IPからの、その日の集計1行」です。送信元が10か所あれば、<record> が10個並びます。

項目読み方
source_ipそのメールを送り出したサーバーのIPアドレス。ここが「誰が送ったか」の手がかりです
countそのIPから何通届いたか。数が大きい行から見ます
disposition受信側が実際にどう扱ったか。none=通常配送/quarantine=迷惑メール扱い/reject=拒否。あなたのポリシーがそのまま反映されます
dkim / spfDMARCの判定に使われた結果。どちらか一方でも pass なら、DMARCは合格です
📌 policy_evaluated の中の spf は、SPF単体の合否ではありません。「SPFに合格し、かつ差出人のドメインと一致しているか」まで見た結果です。ここを取り違えると「SPFはpassのはずなのにfailと書いてある」と混乱します(→ アライメントの解説)。

受け取るための設定 — レポートの宛先

専用のアドレスを用意してください。普段使うアドレスに設定すると、毎日のレポートで受信箱が埋まります。

v=DMARC1; p=none; rua=mailto:dmarc-reports@yourdomain.com;
⚠️ mailto: を書き忘れるのは非常に多い失敗です。アドレスだけ書くとレポートは1通も届きません(→ よくある失敗)。

解析サービスを使う場合は、そのサービスが指定するアドレスを書きます。自社のアドレスとサービスのアドレスを両方書くこともできます(カンマ区切り)。いまの宛先を消さずに追加すれば、切り戻しが要りません。

📌 自分のドメイン以外のアドレスを書くときは、受け取る側に「承認レコード」が要ります。これが無いと、多くの事業者はレポートを送りません。ツール側が案内するので、そのとおりに設定してください。

すでにあるDMARCレコードに ruf= と書いてあったら

他社が設定したレコードや、他のサイトの設定例で ruf= という項目を見かけることがあります。名前は似ていますが、rua とは別物です。

比べる点rua(このページの主題)ruf
名前の由来Reporting URI(s) for DMARC aggregate feedback reports
=集計レポートの送り先
Reporting URI(s) for message-specific DMARC failure reports
=失敗レポートの送り先
中身1日分の集計(誰が何通、合否)失敗した個別のメールのヘッダー情報
個人情報含まれません宛先や件名が含まれうる
実際に届くか主要どころは送ってきますほとんど届きません
実務必ず設定する無理に設定しなくてよい

「ruf= を設定したのに、1通も届かない」という相談がありますが、設定のミスではありません。そもそも、ほとんどの受信事業者が送っていないためです。

仕様上は現役です。2026年5月の RFC 9989 で pct= rf= ri= の3つが廃止(historic)扱いになりましたが、ruf は rua と同じく「active」のまま登録されています。書いても間違いではありません。届かない理由は、送る側が送らないからです。RFC 9989 自身がこう説明しています。

Experience has shown, however, that Mail Receivers rightly concerned about protecting user privacy have either chosen to heavily redact the information in such reports (which can hinder their usefulness) or not send them at all.
(しかし経験上、利用者のプライバシー保護を当然に懸念する受信側は、レポートの情報を大幅に伏せ字にするか、まったく送らないかを選んできた)

失敗レポートには宛先や件名が入りうるため、受信側が送りたがらないのです。「廃止されたから届かない」のではなく、仕様は生きているが、送る側が送らないという状態です。

すでに書いてあるなら、そのままで構いません。害はありません。これから設定するなら、rua= だけで十分です(詳しくは DMARC徹底解説)。

ただし、人の目で読むのは現実的ではありません

ここまで中身を見てきましたが、実際にこれを毎日読むのは無理があります。手順を思い浮かべると分かります。

  1. メールが1日に数十通届く — 受信事業者ごとに1通ずつ。ドメインが複数あれば、その分だけ増えます
  2. 1通ずつ添付ファイルを保存して、解凍する — 多くはZIPかGZIPで圧縮されています
  3. 出てきたXMLを開く — 1ファイルに数十行から数百行。送信元の数だけ行が並びます(→ よくある送信元と、することの一覧)
  4. それを全部つないで、頭の中で集計する — 「このIPは昨日も出ていたか」「先週より増えたか」は、1通の中には書かれていません

出てきた送信元ごとに、何をするか

レポートに並ぶ送信元は、ほとんどが自社の正規のメールです。なりすましではありません。やることは、1つずつ「これは何か」を突き止めて、必要な設定を足していくこと——それだけです。

よく出てくるものと、自社のものだと分かったあとにすることを並べます。

よくある送信元自社のものだと分かったら
社員が書くメール
Google Workspace/Microsoft 365
管理コンソールでDKIMを有効にします。Google Workspaceは初期状態でDKIMが有効になっていません。あわせてSPFに include: を1つ追加します
お客様への一斉配信
メルマガ配信サービス
そのサービスの管理画面で「自社ドメインでの署名」を設定します。初期状態では配信サービスのドメインで署名されていることが多く、そのままではDMARCに合格しません(→ セレクタの調べ方)
Webサイトからの自動返信
問い合わせフォーム、資料請求、セミナー申込
レンタルサーバーから直接送られていることが多く、いちばん見落とされます。そのサーバーのIPをSPFに追加します。DKIMを出せないサーバーもあるので、その場合は送信を配信サービス経由に変えるか、DNSごと移す判断が要ります
取引にともなう通知
注文確認、発送通知、予約確認
そのサービスが「独自ドメインで送る」設定に対応しているかを確認します。対応していれば設定します。対応していなければ、差出人をサービス側のドメインに変えるのも選択肢です
お金まわり
請求書送付、会計SaaS、経費精算、電子契約
多くのサービスに「送信ドメイン認証」の設定画面があります。案内されている値をDNSに追加します
社内の道具
採用管理、勤怠、ヘルプデスク、アンケート、CRM・MA
同じく設定画面を探します。使っていないサービスが出てきたら、契約ごと止める判断を。棚卸しの機会になります
システムからのお知らせ
監視アラート、バックアップ結果、パスワード再設定
自前のサーバーから出ているなら、そのIPをSPFに追加します。サーバー内の mail コマンドやcronから送っている分は、担当者も忘れがちです
📌 追加するレコードの値は、設定値をつくるで作れます。使っているサービスを選ぶと、SPFは1本にまとめた形で出力されます。SPFはドメインに1本しか置けないので、サービスごとに足すのではなく、まとめて1本にするのが正しいやり方です。
⚠️ 担当者本人が、自社の送信経路を全部言えないことがほとんどです。「フォームの自動返信がレンタルサーバーから出ていた」「別の部署がアンケートツールを契約していた」は、実際によくあります。知らない送信元が2〜3割あっても、驚かないでください(→ 送信経路の洗い出し方)。

1日ぶんでこれを繰り返し、しかも変化を追うとなると、続けられる作業ではありません。そもそもレポートは機械が読むことを前提にした形式で、人が読むために作られていません。

そこで解析ツールに読ませます。添付ファイルの回収から集計までを自動でやり、「どの送信元が合格していて、どこが失敗しているか」をグラフや一覧で見せてくれます。無料で始められるものがいくつもあり、送信経路が数個の中小企業なら、無料の範囲で十分に足ります。

📌 どのツールを選ぶかは、DMARCレポート分析ツールの比較にまとめています。7社の公開価格を確認日つきで並べ、選ぶ基準(データ保存期間・送信元を名前で特定できるか・引き上げの影響を先に見られるか)と、会社のドメインでは使えない無料プランの注意も書いています。

見覚えのない送信元だったときの切り分け

すぐに「なりすましだ」と判断しないでください。実際には、自社に関係のある正当な送信元であることのほうが多いです。順に確認します。

  1. 契約中のサービスのIPではないか — 配信サービスやSaaSの公開IP一覧と照合します
  2. 社内の誰かが契約していないか — 「メールを送るツールを使っていませんか」と各部署に聞くと、意外な部署が意外なツールを使っていることがあります
  3. 転送ではないか — SPFはfailだがDKIMはpassというパターンなら、転送の可能性が高いです。転送は仕組み上SPFが崩れます(→ 転送とARC)
  4. それでも不明なら — 本物のなりすましの可能性があります。この場合、レポートは「DMARCを強化すべき理由」を教えてくれたことになります

進め方 — 2〜4週間の流れ

ツールに読ませたあと、何をどの順番で見るのかを具体的に書きます。2〜4週間かけて、この順に進めます。

1週目 — 自社の送信元に名前を付ける

ツールの画面には、送信元が通数の多い順に並びます。上から順に、「これは何か」を1つずつ書き出してください。

画面の表示例やること
Google LLC / 通数が最多 / すべて passGoogle Workspaceの業務メールだと分かる。合格しているので、これで完了
配信サービス名 / 通数が多い / SPFのみ pass、DKIMは failDKIMが自社ドメインで署名されていない可能性。その配信サービスの管理画面でDKIMを設定します(→ セレクタの調べ方)
知らない事業者名 / 通数はごく少数後回しでかまいません。2週目に扱います

この時点で全部に名前が付くことは、まずありません。「心当たりのない送信元が2〜3割ある」のが普通の出発点です。

2週目 — 失敗している送信元を直す

合格していない自社の送信元を、通数の多い順に直します。失敗の型は、だいたい次のどれかです。

レポートの見え方ありがちな原因
SPF fail / DKIM failそのサービスの設定がまるごと抜けている。→ 設定値をつくるで値を作って追加
SPF pass / DKIM failDKIMが配信サービスのドメインで署名されている(第三者署名)。自社ドメインでの署名に切り替えます
SPF fail / DKIM pass転送の可能性が高いです。転送は仕組み上SPFが崩れます。DKIMが通っていればDMARCは合格なので、直す必要はありません(→ 転送とARC)
どの送信元も SPF が failSPFの10回制限に引っかかって、レコード全体が無効になっている疑いがあります(→ 10回制限)

直したら、翌日以降のレポートで pass に変わったことを確認します。DNSの反映に最大72時間かかるので、すぐに変わらなくても慌てないでください。

3〜4週目 — 「もう増えない」ことを確かめる

新しい送信元が出てこなくなるまで待ちます。月末だけ動く請求システムや、四半期に一度のお知らせなど、頻度の低い経路は最初の1週間では現れません。これが「2〜4週間ほど観測する」と言われる理由です。

📌 次の3つが揃ったら、引き上げてよい状態です。
  • 通数の多い送信元がすべて自社のものだと説明できる
  • そのすべてが pass になっている(転送によるSPF failは除く)
  • 1〜2週間、新しい送信元が出てきていない

そして、ポリシーを上げる

ここまで来たら、p=none から p=quarantine へ引き上げます。ここではじめて、なりすましが実際に止まり始めます。いきなり reject にせず、quarantine(迷惑メールフォルダ行き)を挟むのは、読み違えていた場合に取り返しがつくようにするためです。

引き上げの判断基準と当日の手順、切り戻しの備えはp=rejectへ安全に引き上げるにまとめています。DMARC全体の流れはDMARC設定のやり方をご覧ください。

📌 引き上げたあとも、レポートは見続けてください。新しいツールを導入したり、部署が別のサービスを契約したりすると、設定されていない送信元がまた増えます。p=reject のままそれが起きると、そのメールは届きません。

現在の設定は無料診断で確認できます。rua が設定されているかも、ここで分かります。

NEXT DMARCとはレポートを見たら、次はポリシーの引き上げです。